能瀬の読んだ本

【書評・ネタバレあり】伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどうみているのか」光文社

投稿日:2020年1月2日 更新日:

 

新年早々、今年ナンバーワンになりうる本に出会ってしまいました。

きっかけはこちらの記事。

「どうしてこれまで読んでなかったのだろう」と思うくらい私の興味分野で気づいたらamazonで注文していました(12/28の記事で、12/31には届いて読み始め、今日読み終えたので本当にあっという間)。

私は数年前から視覚障害者の伴走をしています。

「どうして伴走をしているのか」という理由はこちらの記事に書いたように「視覚障害者の世界を知りたい」から。

見えない世界

伴走を始めた当初私は「見えないということはどういうことなのか」が気になって仕方ありませんでした。というのも、私は見えるので見えないということが分かりません。私が今後中途失明したとしても見えていた記憶があるので先天的な視覚障害者の方と同じにはなりえません。

そこで、ブラインドランナーズの練習会に参加する度に、一緒に走るパートナーに色んなことを質問していました。

例えば「距離ってどうやって把握しているんですか?」。晴眼者はレースに出る時、事前にコースマップを確認し、コース上にある◯kmの立て札や時計で距離を把握します。もしくはそのようなキリのいいタイミングだけではなく、景色などから「あそこの給水ポイントまで頑張ろう」など考えますよね。

しかし、視覚的情報がなければそのようなことはできない。私の推論は「このくらいのペースでこのくらいの時間走れば何kmだ」と感覚で分かっているのだと思っていました。

質問に対する1人目の答えは「(帽子に付けている)このGPSが教えてくれるから」。よく考えればそれはそうです。頭で距離について考えながら走っていたらやってられないわけで、視覚的情報から聴覚的情報に変わるだけで、私がGPSで行っている方法と変わりはありませんでした。

もう1人の答えは「普段、1人で走ることはできないけど、伴走者がいるときは安心しきってるので何も考えてません」。

伴走を続ければ続けるほど私は「視覚障害者の世界を完全に理解することはできない。」という結論に至りました。伴走の練習会でよく「アイマスクを付けて伴走される側の気持ちになってみましょう」という体験をしたりするのだけれど、普段見えている我々がアイマスクを付けて走ったところで普段から視覚的情報のない世界で生活している視覚障害者の体験はでき得ません。それよりもどのようにサポートすれば安心して走れるのかをインタビューしたほうがよほどいいと常々人に話しています。

閑話休題。本書では、冒頭から私が考えていたようなことが書かれています。

本書のテーマは、視覚障害者がどんなふうに世界を認識しているのかを理解することにあります。

(中略)

障害者は身近にいる「自分と異なる体を持った存在」です。そんな彼らについて、数字ではなく言葉によって、想像力を働かせること。そして想像のなかだけかもしれないけれど、視覚を使わない体に変身して生きてみること。それが本書の目的です。

(p.23)

 

ではいったい、どのようにして「見えない体」に変身すればよいのか。

(中略)

いいえ、視覚を遮れば見えない人の体を体験できる、というのは大きな誤解です。それは単なる引き算ではありません。見えないこととめをつぶることとは全く違うのです。

(p.29)

もう冒頭から引き込まれっぱなし。序章を読むだけで「自分の考え方は間違ってなかったんだ」と満足してしまいました。

そのように我々が済んでいる世界が別だという考え方を入り口に、しかし「それ故に視覚障害者は聴覚や触覚がとても発達している」など一般化することなく、視覚障害者数名のインタビューを通してその「違い」を言語化しようとする試みは非常に興味深かったです。

各章は「空間」「感覚」「運動」「言葉」「ユーモア」に分かれていて、晴眼者の視覚的情報があるにも関わらず見えないものや視覚障害者だからこそ"見えるもの"といった話から、視覚障害に限らず、その他の障害の世界の理解。もしくは障害の有無に関わらず、完全に理解してない我々がお互いを理解しあおうとする際にヒントになる一冊です。

「半分以上本の紹介ちゃうやんけ」と思うでしょう?でも、こういったプロセスが重要ってことも本書には書かれていますので是非ぜひ読んでみていただければと思います。

 

 

 

 

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