能瀬の読んだ本

【書評・ネタバレあり】堀内規生「伴走愛」 株式会社masterpeace

尊敬する伴走者のひとりがInstagramでアップしていたので購入。

かの有名なリオ・パラリンピック女子マラソン(視覚障がい)で銀メダルを獲得した道下美里選手の伴走を務めた著者の自叙伝。

本書の一番の良い点は「伴走は誰でもできることを示していること」です。伴走はとてもハードルが高いものと思われています。しかし、実際に伴走者を求めている視覚障害者の走力は様々で、もちろん道下選手のようにとんでもなく速い方もいれば、歩くより少し速いくらいのペースの方もいらっしゃいます。著者が伴走を始めたときの描写は、特に伴走の指導を受けるわけではなくいきなり一緒に走ったと書かれています。私も初めて伴走したときはそうでしたが、普段ある程度走っている人であれば、意外とできるものです。実際にやりながら、経験を積み慣れていくのが一番で、少しでも興味がある方はとにかく一度やってみてほしいなと思います。

一方で本書の残念な点として、「伴走はレベルの高い人のもの」という印象を与えてしまっていることです。一般的に皆さんが普段耳目にするのはパラリンピックなど世界大会が多く(というか、道下選手が多い)、伴走はとんでもなく速い人でないとできないというイメージができあがっています。本書がどういった目的で出版されたかは分かりませんが、「障害者雇用基準認定協会」の認定書であったり、障害者就労継続支援事業所にて一部が作成されたりしているところを見ると、伴走の裾野を広げることを目的としているのではないのでしょうか。この作りだと「こんな速い選手の伴走できるなんてすごい!」「やっぱり伴走って難しいんだ」というイメージが強くなってしまうのではないかと残念に思います。

また、せっかくお金と時間をかけた出版物なのに、各節の終わりのページに白紙が多いことも気になりました。もう少し、各エピソードを膨らますこともできるでしょうし、そうでなければページ数減らせばいいのにというのが正直な感想です。

とはいえ、普通のランナーでは決して経験することのできないトップアスリートの伴走者の経験が綴られた貴重な一冊です。伴走に興味のある方は是非手にとっていただければと思います。

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