先日facebookにてこんなポストが流れてきた。
これを見て、自分が失語症についてひとつ誤解していたことに気づいた。
失語症とは
失語症とは主に脳血管障害等により起こる高次脳機能障害の1種で、脳の言語機能の中枢が損傷されることにによって、「聞く」「話す」「読む」「書く」といった言語機能が障害された状態をいいます。
脳の損傷部位によって、左大脳半球の下前頭回後部(ブローカ領野)周辺が損傷された場合に起こる運動性失語(ブローカ失語)と左大脳半球の上側頭回後部(ウェルニッケ領野)周辺の損傷で起こる感覚性失語の大きく2つに分けられます。
運動性失語は名前の通り、運動が障害されるもので頭で言語は理解しているものの発話ができないというもの。感覚性失語は運動機能的には問題ないので言葉は流暢に発することができるものの、言語を理解していないため発する言葉に意味がなかったり、聞いた言葉を理解することが難しい。
私が誤解していたこと
では、私が何を誤解していたかというと、運動性失語の場合、考えていることを発語することが難しいのだから、スタンプでの意思表示もできないと思っていたということ。
しかし、こちらの記事によると
最近の研究により、グローバルに利用できる“視覚言語”としての絵文字は、失語症をはじめとする言語機能に障害のある人でも利用でき、自らの感情を表現したり、他者との意思疎通を図ったりすることを助けるものともなり得ることが判明したという。
引用元:失語症患者のコミュニケーションを支援するアプリが話題 (2017年5月6日) - エキサイトニュース
https://www.excite.co.jp/news/article/Dreaminnovation_vent_news_cpgkxMn1M2/
あくまで失語症で障害されるのは"言語"機能だということ。さらにこちらの論文によると
たとえば人が「話す」という言語表出を行なうには,大まかにはまず話し手は思考や概念など,聞き手に伝達したい意図を表現するのに適切な語を,大脳内に貯えられている語の集積,すなわち,脳内の辞書部門から選択し,それらの語を文法的な規則に従って適切な順に並べ,さらに適切な音形に変えて発するという過程をたどる.反対に人の話を「聞く」場合には,耳に届いた音は言語音として認知され,文法的な規則との照合,また辞書部門への照合を通して,音形は意図として解読されるという,言語表出とは逆の過程をたどる.日本語,英語など,いずれの言語においても基本的に音声,文字があり,音韻,形態,語彙,統語など決められた特定の体系に則っ
て使用される.引用元:立石雅子「失語症のある人のための意思疎通支援」、『保健医療科学』2017 Vol.66 No.5、p.512-522
https://www.niph.go.jp/journal/data/66-5/201766050007.pdf
と書かれており、我々が行っている言語表出や言語理解がいかに複雑かということが理解できる。そのため言語に変換せずとも意思を伝えるためのツールとして冒頭のスタンプがリリースされたというわけだ。
失語症の方のコミュニケーションを支援するツール
調べてみるとその他にも失語症の方のコミュニケーションを支援するツールがその他にも色々あることが分かった。
京都府言語聴覚士会では「在宅や今後在宅を目指す失語症の方々が新たな一歩を踏み出す、その後押しをする情報誌」として失語症者応援ガイドブックを作成しており、その中でいくつかのコミュニケーションツールが紹介されている。
また言語障害や聴覚障害を持つ方の基本的人権を擁護し、社会参加を支援する目的で設立されたNPO法人コミュニケーション・アシスト・ネットワークは誰でもプリントアウトして利用できるピクトグラムを使用した支援ツールを公開している。
そういえば自閉症スペクトラム症等言語表出が苦手な発達障害の教育現場でもこのような絵や写真を利用したコミュニケーション手法は活用されているわけで、こちらでも書いたように私の中で言語=意思表出という固定観念がいかに強いものかということを改めて考えさせられました。
この様な情報はすぐに使うことがなくても、必要が生じた場合にとても便利なものだと思います。是非、この機会に様々なツールに触れてみてはいかがでしょうか。