伴走(ブラインドランナーズ鹿児島)

道下選手の"幻の世界記録"に思う

先日、行われた東京レガシーハーフマラソンでのこんなニュースが話題になっています。

このニュースを読んだとき、伴走者の方の気持ちを考えて胸が締め付けられました。

視覚障害者のマラソンにおける伴走に関しては様々な規則が定められており、その最たるものが

  • フィニッシュでは、競技者が先にフィニッシュラインを越えなくてはならない。(同時もしくは伴走者が先着した場合は失格となる)

引用元:競技規則について(日本ブラインドマラソン協会(JBMA))
https://jbma.or.jp/paralympic/guiderules/

というもの。これは伴走者なら一度は苦い思いをさせられたことのあるルールじゃないかと思います。私も国体予選の県大会で先にパートナーよりも先着してしまい、審判にめっちゃ怒られた経験があります(伴走者としての経験と格がまったく違いますが)。

浅生鴨さん著「伴走者」がドラマ化された際にも、ラストシーンに「伴走者が先にゴールラインを割り失格になる」という描写がされました。CM跨いでのラストだったのですが、原作にはなかったにも関わらず私は「あぁ、これは伴走者が先にゴールして失格になるな」と分かったくらい、1回経験するとトラウマになります。

道下選手の伴走を務めた志田さんも当然このルールを知っていたわけですが、

  • ゴール約100メートル手前の係員からの指示をうまく把握できず、「我々もどっちに行けばいいのか分からない状況だった。ゴールテープも急に張り出され、それを切らないといけないのかなとか、目移りしてしまった部分があった」
  • 通常はコースの外側に寄ってゴールすることが多いが、この日は内側へとテープが張られ、「あれっと思った」

【陸上】東京パラ金メダル道下美里が失格、幻の世界記録に ガイドランナーが先にゴール - 陸上 : 日刊スポーツ
https://www.nikkansports.com/sports/athletics/news/202210160000401.html

とのこと。私のような一般の伴走者でも「ゴールは後ろに下がる。ゴールは後ろに下がる。」と唱えながら走っていたとしても、小さいトラブルに動揺してしまうわけで、キロ4分を切るペースで走ってきて「さぁ後はいつもどおりロープ切れば世界記録」と思ったところで想定外のことが起こってしまう動揺は計り知れません。そして、トラック競技で少ない人数で走ってるとまだいいのですが、大人数のマラソン大会だとお互いの声は聞きづらくなるわ、他のランナーの動きに気を遣わなきゃいけないわで本当に大変なんです。

世界トップクラスの方でもこのようなことが起こってしまうなら、私なんかがテンション上がって先にゴール切っちゃうのなんて当たり前のことだなと思っちゃいました。

各紙、道下選手が「こういうこともあります。」と「伴走者を全く責めなかった」「伴走者をかばった」という書き方をしていますが、選手と伴走者の関係って本当に持ちつ持たれつで、お互いがお互いを信頼しあってなんぼなので、今回のレースに限らず「何かしらハプニングが起こったとしても、しょうがないこと」という覚悟を持ってらしゃるんだと思います。道下選手の場合は、持ち前の性格もあって前向きに次を見据えているんでしょう。

かくいう私も今年の国体予選の県大会にてレース前にふくらはぎを肉離れして、パートナーのチャンスを潰してしまいました。

私が選手側の立場だったら、ぐちぐち文句を言ってしまいそうですが、恨み言ひとつ言わず私の怪我の心配をしてくれた上にお昼ごはんまでご馳走してくださいました。本当に申し訳なかったですが、「早く治して次はパートナーの目標のために頑張ろう」と前を向けたのを覚えています。

きっとまたすぐに、このペアで世界記録を樹立してくれることでしょう。それを楽しみに私も伴走頑張ろうと思います。

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