能瀬と読書 能瀬の読んだ本

003 森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』

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森見登美彦さんの小説を読むのは2冊目。友人の影響で『有頂天家族』を手に取り、facebookで有頂天家族を読み終えたことを書いたら今度は別の方々からこちらの本を勧められた。いずれも少々厚めの割に大変読みやすく、それぞれの章が長いのにあっという間に読めちゃいます。もっと早く出会いたかった作家さん。

こちらの2冊を読んだ時点での森見作品の特徴を3つあげると

  1. なんともかわいらしい主人公
  2. ミステリアスで魅力的な女性が出てくる
  3. 日常の中でのSF
  4. 「死」について考えさせられる

1つずつ説明すると

1.なんともかわいらしい主人公

『有頂天家族』では面白く生きることがモットーのタヌキ、『ペンギン・ハイウェイ』では“研究”に忙しく子どもらしくない小学生。どちらもかわいすぎて想像するだけでニヤニヤしてしまう。主人公だけでなく周りのキャラクターも魅力的で、『有頂天』の下鴨一家や赤玉先生、『ペンギン』のウチダ君(この子が私のツボだ)にハマモトさん。そして、嫌なことばかりしてくる金閣、銀閣兄弟(『有頂天』)にしても、スズキ君(『ペンギン』)にしても腹が立つんだけどなんだか憎めない。

2.ミステリアスで魅力的な女性が出てくる

『有頂天』の弁天様に『ペンギン』のお姉さん。どちらも神出鬼没で得体が知れない。美しく奔放で目が離せない。主人公はこの女性たちに想いを寄せているが、自分も一緒になって恋してしまう。

3.日常の中でのSF

SFといえば非日常な感じがするが、『有頂天』にしても『ペンギン』にしてもSFなのだけれどとても身近な感じがする。『有頂天』ではタヌキと天狗と人間が普通に生活をし、普通に会話を交わしている。『ペンギン』ではお姉さんはペンギンを出すことができ、ジャバウォックを生み出すことができ、どこかへ消えてしまう。この日常と非日常の境の曖昧さがストーリーに親近感を覚える理由の一つではないだろうか。二作しか読んでないけども勝手に「散歩道SF」と名付けよう。

存在するのか存在しないのかよく分からない“モノ”も興味をそそる。赤玉ポートワインと偽電気ブランは読者の皆が飲みたいと思ったであろうし、“海”とジャバウォックは皆が見てみたいと思ったであろう。そしてプロミネンス!と何度叫んだことか。

4.「死」について考えさせられる

『有頂天』では父親が人間に狸鍋にして食べられてしまい、死に際の潔さに死に方(生き方)を考えさせられる。『ペンギン』では私がずっと悩んでいることを、そして先日妻に言われたようなことを小学生のウチダ君が悟っており、小学生が理解していることを何度読んでも理解できない自分に愕然とする。

なにより、ウチダくんのこの言葉が私は好きだ

「ぼくはわかっている。でもわかっていることと、安心することは、ぜんぜんちがうことなんだよ。」(p.261)

「・・・こういうことを考えていると、ぼくはあたまの奥がつーんとするんだ。それで、何かぐるぐるした感じがする」(p.56)

そして、主人公のこの言葉

「おっぱいが好きであることはそんなにへんなことだろうか?」(p.114)

私もおっぱいが好きだ。そんなにへんだろうか?

ああ、いよいよいつものようにまとまりが無くなってきた。こういう時は強引に終わるに限る。僕は寝ることにしよう。

ぐんない

 

2010年5月30日 初版発行
出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)
348ページ
ISBN-10: 4048740636
ISBN-13: 978-4048740630
装画:くまおり純
装丁:鈴木久美

 

そういえば、中学生だか高校生だかに読んでた『ペン』って本を思い出した。フェルトでできたペンギンの話。大学の頃売っちゃったけどまた読みたいなぁ。

 

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