きっかけは上田 怜さんのストーリー
一昨日のことInstagramでランラーズのランニングチームTeam R2メンバーとして過去に2期活動されたこともある上田 怜さんが、こんな投稿をされていました。※ご本人への許可を取った上で掲載しています。
ふと鹿児島マラソン2017での経験を思い出しブログに書こうと思い立ち、すぐさま自分宛てに「ノートに上田玲ペーサーの件」と送っておいたのですが、朝見るとそちらの投稿が消えていて夢かと思ったのはまた別の話(ストーリーだっただけですが)。
上田さんの考えるペーサーとは
なぜ、上田さんがこの様な投稿をされようと思ったのか。それは、これまでレースでのペーサーを務めた際に「速すぎないか」という指摘を受けたり、「さっきより◯秒速いね」とラップを伝えられる経験を通し、ランナーの中に「ペーサー=常にイーブンで走る人」というイメージが強いと感じたからとのこと。そうではなく「ペーサー=ランナーさんに設定タイムで気持ちよくゴールしてもらうためのお手伝いさん」という考えのもと、ペーサーについていく場合の注意点を書かれるに至ったわけです。
※ちなみにここでのペーサーは国際大会や実業団などシリアスランナーのペーサーではなく、市民マラソン大会でのサブ3.5より遅いくらいのペーサーを想定して書いています。
鹿児島マラソン2017で飛び交った怒号
先に書いた私の経験を書きます。私はこれまでペーサーについて走ったことが数回あります。
熊本城マラソンではサブ4ペーサーのペースに不安になり、10kmで抜け出しペースを上げた結果、30kmで抜かれそこからタレてサブ4失敗。
次の北九州マラソンでは反省を活かし、30kmまでピッタリついていくも30km地点での猛吹雪&食切れで置いていかれサブ4失敗。
そこから数回はペーサー不信(実際にはただの実力不足です)に陥り、ついていくのをやめてましたが、サブ3.5を目指していた鹿児島マラソン2017で11km地点からの数キロだけペーサーにお世話になりました(詳細は↓に記載。)
野村周平にのかわいいペーサーくんに「一緒にいきましょう。35kmまでに2分の貯金を作る予定です」とスカウトされ、有頂天になって一緒に走り始めた最初のラップが「4:34.8」だったため「はえーなー!」と口に出してしまいました。すると周平くんに「上り下りがあるので一定しなくても大丈夫です」と諭されました。
するとその後、1km毎に周りのランナーたちから「絶対速いって!」「ペーサーこれ何キロペース!?」と怒り混じりの怒号が浴びせられ、さっきまで自分も「はえーなー!」と思ってたくせに「ペーサーって大変だな。そんな文句あるなら自分でコントロールすればいいじゃん」と考えながらその数キロを走っていました。その後、17km地点でペースの遅さに業を煮やし集団を飛び出していき見事サブ3.5を達成しました(周平くんもちゃんとサブ3.5で帰ってきていました)。
ここで再度見てみましょう
ということでここで上田さんの投稿を再度見てみましょう。
基本的なことですが書いてみます。マラソンのタイムにはグロスタイムとネットタイムがあります。グロスタイムは号砲がなってからゴール地点に到達するまでの時間です。スタートブロックが後方になればなるほど、スタートゲートをくぐるまでに時間がかかりますし、余計な距離を走ることになりますが、こちらが競技場の正式なタイムとなります。
一方、ネットタイムはスタート地点からゴール地点までの所要時間です。つまりは、全員が同じ42.195kmという距離を走ったタイムということになります。
ご自分の目標やベストタイムをグロスタイムで言うか、ネットタイムで言うかは個人の考え方や好みによるところですが、上述の通り、競技場の正式なタイムはグロスタイムですのでペーサーはグロスでの目標タイム感想を目指すというわけです。
スタートブロックが後方になればなるほど、スタートゲートをくぐるまでに時間がかかります。サブ4周辺のブロックはスタート直後渋滞し、最初の数キロはキロ7分かかることもしばしば。サブ4で走るにはキロ5分40秒で走る必要があるため、10km前後まででその遅れを取り戻すために速めのペースで走るわけですね。
ずっと平坦なコースを走っているならいざしらず、コースには上りもあれば下りもありますし、エイドもあります。上りやエイドでは当然ペースは落ちますし、下りでは上がります。そこをイーブンペースで走ろうとすると余計なエネルギーを使ったり、逆に楽に速く走れるチャンスを逃すことになります。ですので、地形に合わせて目標達成に影響の出ない範囲で上りやエイドではペースを落とし、下りではペースを上げるためラップは常に一定にはなりません。
私がペーサーに付いていったときはエイドで苦しめられました。エイドでペーサー集団に遅れを取ってしまい、追いつくのにエネルギーを使ってしまった結果、最終的にはエイドで付いていけなくなるという結果に。単に当時、実力不足だったこともありますが、エイドが見えた時点でペーサー集団から離れ、補給を済ませて集団を待つ方法を取ったところ楽に走ることができるようになりました。
これもあまり知られていませんが、常に風を受けながら走ると肌が乾燥したり、風を受けて身体への負担が大きくなります。ロードバイクの競技では、先頭を交代しながら走るというマナーがあるほど、風により身体が受ける負担は大きいです。ペーサーの後ろを走ることで風受けることなく楽に走ることができます。
上述の北九州マラソンでは30kmまでペーサーの右隣を走っていたのですが、そうするとペーサーが隣りにいるか何度も左を向くことになります。すると、中盤から首が痛くなるという結果に(私はストレートネックなので特に)。というわけで、そういった理由からもペーサーの後ろを走ったほうがいいです。
付け加えて
上田さんが書かれていることに付け加えて、私からひとつだけ。
たとえアクシデントで脱落者が出たとしても安心して目標タイムで完走できるように複数のペーサーがひとつの集団で走っている場合が多いように感じますが、大会によっては複数のペーサーがそれぞれバラバラに走る場合もありました。どのようなプランで走るのかをあらかじめ聞いておくと安心して臨むことができますし、単純にコミュニケーション取りながら走るのは楽しいです。
上田さんとやり取りする中でこんなこともおっしゃってました。
これを聞いたとき、伴走と似ているなと思いました。私は伴走する際、走る相手によって走るペースはもちろんのこと、声掛けの方法を変えます。変えるというか、事前にもしくは走りながらどのような声掛けを相手が望むのかを確認した上で声掛けするようにしています。
昨年の鹿児島マラソンのパートナーはその日初めて一緒に走る方だったので、前日に受付に同行し、当日もホテルまで迎えに行って会場まで歩いて向かう中でできる限りコミュニケーションを取るようにしていました。
ペーサーも伴走者もランナーの目標をサポートするという点においては一緒。そのためには、相互理解のためのコミュニケーションが大事だということを改めて考えさせられました。
機会があれば、ペーサーにもチャレンジしてみたいなと思った次第です。