年末早々とても素敵なイベントに参加してまいりました。その名も「新春初笑い 林家彦いち落語会」。せっかく着物を所有しておりますが(父のお下がり)、年に1回着るか着ないかなのでこの機会を逃すまじと着て出かけました。正月に着物きて落語とか素敵でしょ?
正月からなんて贅沢な
お正月から彦いち師匠の噺が聞けるなんて!たぶん正月は寄席が忙しいはず。しかも2,000円ですよ、2,000円。たぶん鹿児島の方々(特に見たことのない方)は落語って高いイメージなのではないかと思います。通常、常設の寄席(新宿末廣亭や浅草演芸ホール)は約4時間の間に色んな噺家さんの噺が聞けて2,500~3,000円です。しかし、鹿児島で有名どころの独演会を聞きに行くと2時間で2人の噺しか聞けないのに3,500円~4,500円はします。これは、噺家自身の旅費交通費やホールの利用料などがかかるからです。企画会社への手数料なんかも入ってるんですかね。
それが、本日の落語会は2,000円。よく考えたら(よく考えなくても)寄席よりも安い!なぜか?こちらの落語会を企画・運営してるのは「笑援隊」。実はこちらイベント会社でもなんでもなくって、あるサラリーマンの方が「鹿児島の方々に落語文化を広める」ために手弁当で開催されてるんです。本業があるため開催できない年もあったものの、今回で(独演会という形では、おそらく)11回目。赤字の年もあったそうですが、それでも続ける姿勢には本当に頭が下がります。思い返してみれば私が初めて落語を生で見たのもこちらの独演会。いらしてた知人の1人も、今日が初めての落語だと聞いてとても嬉しくなりました。
すべてが手作り
なので全てが手作りなのです。上記のポスターも
こちらのチケットも。手帳に演劇やら落語やらのチケット貼ってるのですが、新しい手帳に
貼られる初めてのチケットがこちらで嬉しい。「大入」の文字が縁起がいいですね。
こちらの演台はマルヤのスタッフさんが木製の台を重ねて設営されたもの。
おかげさまで2,000円という破格の金額で見られるわけです。感謝!
本日の演目に入る前に
さていよいよ彦いち師匠の噺。とその前に演劇とかの感想を書く際はネタバレに気をつけるのですが、落語はネタがバレてもおもしろいものです。むしろ予め知識を入れておいたほうが楽しめることの方が多いです。今日も最中には分からなくって帰ってから「ほぉ~!」ってなったところがありました。私も落語に詳しいわけではありませんが、せっかくの笑援隊企画の落語会ということもありますので、知ってたら楽しめそうな(受け売りの)知識をひとつ。
なぜ演目が書いてないのか
音楽を聞きに行くとプログラムが配られますよね?演劇を観に行くとタイトルが決まってますよね?では落語に行くときはどうでしょう?公演のホームページを見ても広告を見ても書いてあるのは噺家の名前だけ。会場についてプログラムが配られるわけではありません。寄席なんか行くと舞台の端に「めくり台」がありますがそこに書いてあるのは噺家の名前だけ。不思議に思ったことありませんか?実は噺家さんは舞台に上がる直前まで、もっと言えば舞台に上がってお客さんの顔を見るまで、更には枕(噺の冒頭部分)を話し終えるまで、演目を決めてません。
なぜなら、通常の寄席は上述した通り4時間の長丁場の中で前座-二枚目-真打ちという順で10名前後が噺をします。当日、舞台に上がる噺家がスタート時点から会場にいて全員の噺を聞いているわけではありません。後半の噺家は出番の少し前に会場入りし、今日どんな噺が前に出たのかを帳面で確認します。前に出たのと同じ話はするわけにはいきませんし、人情噺の後に人情噺というのもどうでしょう。もちろん噺家によっては十八番の噺があったりする方もいるでしょうが、基本的には会場入りして、帳面で前の噺を確認しいくつかの候補に絞った上で、舞台に上がり客層等を確認し、枕で反応を見て話し始めるといったところでしょう。
地方の独演会も同様ですね。地方なんかは滅多に公演があるわけではないので、以前その地方でやった演目を確認して、いくつかの候補に絞った上で、舞台に上がり客層を確認して、枕で反応を見て最終的な演目を決めるわけです。
真打ちは何がすごいのか
ここまでくると真打ちの何がすごいか分かりますよね?ただたくさん噺をしっているだけではダメなわけです。自分の前に10人も噺をした人がいて同じ演目はできず、似たような演目もできず、その上でお客さんが満足する噺をする。それが真打ちなわけです。ただ長年やっているわけではないのです。どうですか?少しは真打ちの凄さが分かりましたか?
お後がよろしいようで
ちょっと長くなってきたので「お後がよろしいようで」で強引に締めようと思ったのですが、この「お後がよろしいようで」についてこれまたひとつ。よく素人が落語の真似をする際、話の締めでこの「お後がよろしいようで」を言いますよね。なんとなく「オチが上手についたでしょ」的な使われ方がされているイメージですが、ちゃんと使うシチュエーションが決まっているのです。噺がサゲ(オチ)まで行かずに終わることがあります。独演会で時間が限られている場合もありますが、寄席なんかでは次の演者が来るまでの時間の調節をしている場合があるようです。始まる前に後の演者が来ていない(準備ができていない)場合に、噺の途中で舞台袖から準備ができたという合図が入ります(合図の方法についてはまた別の話)。その合図を受けて「お後がよろしいようで(後の方の準備がよろしいようです)」と言って噺を終えるわけです。なので、大トリがこの台詞をいうことはまずないと考えてよいでしょう。そして、ひとりで落語の真似事をして「お後がよろしいようで」もない訳ですね。
ほんで彦いち師匠
いいかげん「彦いち師匠はどうなった」という声が聞こえてきそうなので、演目の話に。キーワードと感想を交えながら適当に。
1.反対俥
枕
- 事前にスタッフから「舞台は頑丈です」と言われたが頑丈と言われても困る。⇒後からこれが効いてくる
- 会場は普段ダンスの練習等にも使用される多目的ホールとのこと。鏡があって、ホールのホリゾントみたいにシートが貼ってあるんだけど、聞いたところ伊集院のニシムタで買った虫除け
- 昨日、鹿児島入りしたのだけれど年末年始の仕事で疲れてたのでマッサージ呼んだらそそっかしいおばさんが来た(ここでそそっかしい人の噺することが分かる)。
- 右スッキリ、左ドンヨリ
- 初めてのお客さんは15人前後(お客さんは全部で80人位?)
本筋
- スプリングハズカムが良かった
- 落語会きっての武闘派と言われるだけあって、動きが激しい。あんな大きな声で話しながらあんな激しい動きをできるのは彦いち師匠くらいではないだろうか。台がグラグラ。師匠焦る。
- 動きが大きく分かりやすいので子どもや初心者でも入り込みやすいのだろう
- 扇子でお魚、ちょっと大きなお魚
- サゲの「(川に落ちた芸者を助けない俥屋に対して客が)なんで芸者を上げてやらねえんだ」「芸者を上げるくらいなら俥屋なんてしてねぇや」が分からなかったのですが、家に帰り妻に意味分かる?って聞いたところ「芸者を買うことでしょ」とあっさり言われ納得しました(もっと深い意味もあるようですが)。
2.権助魚
枕
- 普通の落語会では噺が終わって袖に帰るのだけど1人なので今日は帰れない。ずっと座りっぱなし。
- 空港で飛行機が飛ばない話
- 出発ロビーで時間になっても入場アナウンスがならない
- やっとのアナウンスで「機長が来ていません」
- ああいうところでキレるおじさんは目的がキレることなので内容がない
- 「ふざけんなよ!」「冗談じゃねえよ!」「・・・」の3段落ち
- ああいう時のおばちゃんは強い
- ここで上述の噺の決め方について少しおっしゃってましたね。予め5個位には絞られてるのが4つになって3つになって2つになって、また3つに増えてなんつって
- ここで夫婦のヤキモチの噺&権助というキーワード。前にも書いた気がするが私の落語への興味が深まったのはドラマ「タイガー&ドラゴン」(なんてミーハー&浅はかなんでしょう)。あのドラマで噺の枕を聞いて「ほぉ~。○○だね」と演目を当てるシーンがとても好きで、上述のキーワードを聞いて「ほぉ~。権助提灯だね。」「大好きな『あはは夜が明けた』が聞ける!」と1人興奮していたのですが、まさかの不正解。これも落語の醍醐味ですな。
本筋
- 「向島のマルヤさん」ってずっと聞こえてて「あぁ、マルヤへの気遣いか」と思っていたが調べてみると「向島の丸安さん」らしい(笑)
- 「ニシンとスケトウダラが手をつないで」と「痛いのと寂しいのと」のくだりがとても好き
トイレ休憩
- トイレに行っている客を師匠が待つ時間
- 休憩と本番の間
- 聞きたいことを聞く時間
- 質問1「前の枕の飛行機は結局どうなったんですか?」師匠「自分は別の便で飛んだんだけど聞いたところによるとそこから30分ほど経って機長が来たらしい」客席の紳士「貴重な体験でしたね」師匠「この時間は言いたいことを言う時間です」会場「(笑)」
- 質問2「思い入れのある登場人物はいますか」師匠「甚平さんが好き。人が良くてダメな人。与太郎はちょっと賢いところがある。」与太郎はタダのアホと思っていたのでちょっと新鮮。権助はなんて言ってたっけな?
3.長島の満月
枕
- 師匠の子ども時代 牧園-長島-松山
- 地元が同じだとぐっと話題の幅が狭まる。きみまろさんと松山町の原口さんの話で盛り上がった。
- facebookで目上の人には「いいね!」しづらい。「結構でございます」ボタンを作ってほしい。
- 控室でのfacebookの話
本筋
- 「記憶のシャボン玉」って表現が好き
- オイルショックショック!
- 「これからこの信号機を守っていかんにゃいけんのや、この島は」かっこいい
- 3年前に黎明館で聞き、我が家でしばらく流行った「石鹸のごたぁ」再び!
そんなこんなであっという間の1時間半でした。やっぱりLIVEっていいですよね。同じ噺でも、話す人が違ったり、会場が違ったり、お客さんによっても変わるし、自分の体調や心境によっても全然違う噺に聞こえます。聞けば聞くほど深まりますね。
彦いち師匠、スタッフを含む笑援隊の皆さん、マルヤガーデンズさん、時間を共にしたお客さん、本当に素晴らしい時間をありがとうございました。
※間違いやまずい表現がございましたらご指摘くださいませ。
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過去の笑援隊公演の記事
- 2010/11/21 第9回林家彦いち独演会
https://blog.nosehiroyuki.com/?p=380 - 2011/07/18 あい・さつ連合落語会に行ってきた
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