能瀬の読んだ本

2017_033 広瀬友紀『ちいさい言語学者の冒険』

子どもが言葉を習得していく過程は実に不思議である。しゃべり方を技術的に教えていないようにしゃべり始め(うちの場合は技術的な指導が必要とみなされたが)、文法を教えたわけでもないのにいつの間にか正しい日本語を話している。子どもが言葉を習得していく過程で生じる間違いや疑問から言語を習得するということはどういうことかについてまとめたのが本書だ。

もう、のっけから興味深い。「か」にテンテン付けたら「が」、「さ」にテンテンで「ざ」、「た」だと「だ」。では、「は」は?と聞かれたら私たちは当たり前かのように「ば」と答えますよね。ところが「か」と「が」、「さ」と「ざ」、「た」と「だ」の関係と「は」と「ば」のそれは違うというのです(どう違うかはやってみてください)。前者と同じ関係であれば「ぱ」と「ば」がそれに当たるとのことで、昔は「は」行は「ぱ」行だったとか。なので、小さな子に「「は」にテンテンは?」と聞くと答えられなかったり間違ったりする子が結構いるとのこと。でも、これはある意味で正しいわけです。ね、すごくおもしろいでしょ。

その他にも「死ぬ」を「死む」と間違える理由や(ナ行五段活用の標準語の動詞は「死ぬ」だけってすごくないですか?超まめちきし)、言葉を習得していく過程での誤用は日本だけではなく英語圏でもあるという例、大人が教えようとしても教えられないのに自分で勝手に規則を当てはめて学んでいくメカニズムなど専門的な話をとても分かりやすく解説しています。

言葉を習得する過程の子が近くにいる方は、普段感じているオカシサと照らし合わせながら読むと一層楽しめます。私も読みながら「おこのみやき」を「おこもやき」と言っていた時代(たぶん「おともだち」に引っ張られている)や、歩き疲れると「もうぼくあしがブタブタ」(もはや意味不明)と言うことや、こちらの記事に書いた

渡り鳥が砂に首を突っ込んで餌を食べてるのを指して

「首突っ込んで何食べてます。何かわかるかな?」

周りの子「ゴカイ!ゴカイ!!」

奏太「ぼく4回!!」

というエピソードを思い出していました(これは本書の間違いとは何の繋がりもない…ある?)。

そういえば今日は保育園でこんなこと会話が。保育園でシール帳の表紙に「ふじ のせ そうた」という文字を見て「なんか、藤井聡太四段みたいだな」と言うと「4ばんじゃなくて5ばんだよ」と息子。「ゴカイのときは4回なのに四段の時は5番かよ!」

姶良市立中央図書館の新刊コーナーで偶然見つけた本だけど、これは買い。amazonで注文しました。

 

本書は元々、言語学者の著者がSNSで子どもが発したおもしろ言葉を発信したことに端を発しているとのことなのですが、以下のサイトで本書の続きのような小ネタ臭をお楽しみいただけます。

Yuki Hirose - ちいさい言語学者の冒険 https://sites.google.com/view/yukihirose/%E3%81%A1%E3%81%84%E3%81%95%E3%81%84%E8%A8%80%E8%AA%9E%E5%AD%A6%E8%80%85%E3%81%AE%E5%86%92%E9%99%BA

 

 

 

-能瀬の読んだ本
-, ,