短歌

2022年

11月

  1. 素晴らしと彼が褒めしは君なれど我が子のように言ふ「そうでしょう」
  2. ハナタレの流行病(はやりやまい)で久方の大型連休我が家に来たり
  3. 暗黒の川沿いをただひた走るそのまま夜に吸い込まれてけ 23.07.28_南_高
  4. 三人の家族で二人コロナなる熱を測るも毎度の六度
  5. 黒い人怖くて見れる君が今コナンは皆に人気だねと言ふ
  6. 長期間休んで思い知らされる社会はまわる我おらずとも
    (2023年10月12日南日歌壇 選者:高野公彦先生)
  7. 戸一枚隔てて眠る子が我のZOOMの声を子守唄とす
  8. 国勝ちて明日は休もう皆が言うなれど私は週休七日
  9. 一晩で十度厠に目覚めるはコロナのせいか 否、歳のせい
  10. 体重も背丈も同じひょっとして日本代表僕もなれてた?
  11. 治ったと浮かれつ走る十五キロ 三度曇るは我が肺と空
  12. 日本語を学ぶあなたと日々話す時間は家族よりも長きに
  13. 「継続は力なり」この六文字を信じ努力する三十九まで
  14. 苦します鏡に写る消せぬ顔君がくれしは普通の暮らし

12月

  1. 離れ行く君の心を知りながら素知らぬ僕は人にあらずか 23.06.27_南_永
  2. ありがとうあなたの顔見て言いたくも灰にならねば会わせてもらえず 23.07.28_南_永
  3. 肺炎になりかけて知る寝る前の歯磨き大事僕はアラフォー
  4. いいですよ二つ返事も忘れてたかたや記念日かたや駅伝
  5. 受かったら会えなくなると君が言う試験がふたりを繋ぐ鎹(かすがい) 23.07.20_南_小
  6. 親不知(おやしらず)痛くて仕事やる気出ず誰かテンション上げてプリーズ
  7. 短歌なら何を言っても許される勘違いして荒ぶるは脳
  8. 「その本は持ってますから貸しますよ」電子書籍じゃできぬ嗜み
    (2023年1月26日南日歌壇 選者:小島ゆかり先生 評あり)
  9. 好きな子が好きなもの皆知りたくて試してみては知った気になる
  10. 「スタートは気が急いちゃうから見ないでね」言いついつものロケットスタート
  11. Twitterいいねがついて嬉しいなと思うといつもスパムばかりね
  12. 高い金払ってどうして走るのか標(しるべ)と刺激を得るためかしら
  13. 心肺も足もまったく痛くないなのにどうして歩いちゃったの
  14. 悩みごと増えれば増える我が白髪何より確かなストレスチェック 23.07.20_南_永
  15. 才能がないと分かっていればこそ何も恐れず書ける楽しさ
  16. 「実は僕昔サッカーしてたんです」四年に一度だけ思い出し
  17. コツコツと書き留めしこのメモ帳に溜まるあの日の私の涙 23.06.27_南_永
  18. 満たされし我が口からは言葉でず人としてなおつまらなくなり 23.07.20_南_永
  19. 外に出たいや出てないと白黒のボールをめぐる場外戦
  20. 「嘘つき」の台詞(ことば)に君が怒るのは誰より僕が嘘つきだから 23.07.28_南_小
  21. 多様性分かった顔して誰よりもその腹の中渦巻く差別 23.01.13_南_小
  22. 喧嘩してこのまま事故で死んだなら君はごめんと言ってくれるか 23.01.13_南_小
  23. 張り切ってウェア着て寝るも寝坊する罪悪感を流す大雨
  24. 夜の空輝く君が消えたなら明日から何を見上げたらいい 23.07.20_南_小
  25. 「久しぶり!」昨日も会ったはずなのにそんなに会うの待ち遠しかった?
  26. サンタから暇な私にプレゼント聖なる夜に会社にいマス
  27. 金浮かすために前売り買ったのに自県で演らず浮かない気持ち
  28. 「父母の喧嘩の原因僕のせい?」思うどころか「喧嘩してたの?」
  29. 気に入りのシャンプー使い髪洗う「おじさんくさい」言われ台無し
  30. ラーメン屋隣の席で昼間からビール飲む女(ひと)グッと惹かれる 23.07.28_南_高
  31. 家庭科の長期休みの宿題で息子が作る豚汁の味

2023年

1月

  1. 新年の目標立てて叶えても数年経てば人生終わる
  2. 孫に会い6位の祝いを渡す父グランドゴルフの優勝自慢す 23.07.20_南_高
  3. 大好きな人が薦めしものに触れ自分の中にその人を飼う
  4. 久方に語りし友の手術跡見ては己の余生を憂う 23.01.27_南_高
  5. やなことを先延ばしにし年明ける正月休み永遠に続け
  6. 在学時話した記憶なき君と文交わす日々縁は異なもの 23.01.27_南_高
  7. 「母料理、父グラウンド」いい加減そういうのもうやめたらいいのに
  8. いつだって困ったときに声かける後輩なのに頼れるあいつ
  9. 土触り轆轤を回し自惚れるできた器はほぼ師つくりし 23.07.20_南_高
  10. 引退し何をするでもない父のモチベ上げるは野球する孫
  11. 以前より手話習いたい思いしが口閉ざしますドラマのせいで
  12. 喧嘩して腹が立ったら無視をする変わることない三つ子の魂
  13. WEB会議画面に現るドングリの形の自分見ては噴き出す
  14. 洗濯を干してる短い時間だけ話してくれる居間で眠る子
  15. 公園でデートしている高校生恥ずかしいからあっちを向いて
  16. 「なんだかね開き直った感じなの」君の強さが僕は好きです 23.08.10_南_小
    (2023年9月14日南日歌壇 選者:小島ゆかり先生)
  17. 新しい知識を知れば知るほどに自分の意見何処へと消ゆ 
  18. 信じたいそんな気持ちと裏腹に疑う心が僕苦しめる
  19. 年明けて今年こそはと気合い入れしばし読書家一月坊主(ひとつきぼうず) 23.02.09_南_高
  20. うたよみんサービス終了いうなれどうたよむこころ終わることなし
  21. 「聞いてない」どれだけそばで話しても聞く気なければ聞こえはしない 
  22. 「息子にも野球をやってほしかった」親父の夢は孫が叶えし
  23. emptyなってからの生命力まじハンパないだるまストーブ
  24. 「お父さん?私てっきりお兄さんかと」んなわけもなく嬉しくもなく
  25. 大雪が心配になり早帰り心配になりまたすぐ出社
  26. 一度だけ酔ったふりしてDMを送ってみようかあの日みたいに
  27. 「こんな雪降ったうちには入らない」そういう君は野分に騒ぐ 23.02.09_南_高
  28. 後ろからノーブレーキで突っ込んだ爺さん怪我してまるで加害者
  29. 「ごめんなさい。でも、能瀬くんいい人だから…」フラれ文句に続く沈黙 
  30. 「今後からひとりで寝る」という息子よりもお先にひとり寝る妻 
  31. 「能瀬さん目にほくろあるんですね」って言うほど俺の顔を見てたの? 

2月

  1. 手がかかる異国のスタッフ憎めない理由は顔がうちのばあちゃん 
  2. 福岡へ向かう序盤に覆面に捕まり二時間気まずい車内 
  3. 営業の電話の社名きらきらで取った子照れて教えてくれぬ 
  4. 「四年前?」「確か七年前のこと」記憶狂わす空白の三年 23.02.24_南_永 
  5. 選ばれし者だけ走る競争を完走したるは夢と霞みし 
  6. 「あのドラマ舞台がえびのなんだよね」教えくれしは架空の貴方 
  7. ベトナムで初対面の鍋囲む君はホテルでひとりパン食ふ 
  8. 「惚けたふりするのも楽じゃあないわ」と孫へとぼやく二人の車内 23.02.24_南_永 
  9. 突然の父からの電話身を案ず手紙の速度で届く返信 
  10. 出し抜けに黒い稲妻鳴り響き私の前歯再び欠ける 
  11. 君がいつも頑張ってるの知ってるでも「頑張れ」以外何を言わんや 23.08.10_南_小 
  12. 産み落とすイオンタウンがこの街に帖佐駅から歩くティーンズ 
  13. 鋏持つ君の独立待ち侘びて我が前髪はけふも伸びゆく 23.08.10_南_永 
  14. 昼食にやむなく入った刀削麺あの日の火鍋フラッシュバック
  15. 耳かきの好きが高じてもう二年鳴り止まぬ音いざプレーボール 
  16. 気を利かせ焼き菓子渡すバレンタイン「次長ひと月間違えました?」 23.03.10_南_永
  17. 旅先のふたりの中を引き裂くは「10キロ先まで直進です」
  18. 「大丈夫、今日会えなくてもいつかまた」決して来ないいつかをば待つ 23.08.10_南_永
  19. 快音を鳴らし白球君に飛ぶ祈りとともに止まる心臓 23.03.10_南_永
  20. 寝る前に明日の夕餉を決めるのは君がふたたび消えないように
  21. 我が背中真っ赤な生傷絶えざるは牛肉、牛乳、卵の恨み
  22. 「誰とでも友達なれる」言ふ君は孤独な父を反面教師に
  23. どうせすぐピザついた手で触るのに「ほぼ新品」をメルカリで買う
  24. 「あの時に手を出しててくれてたら」そういふことはあの時に言へ
  25. 我が健康案じてくれし隣人の訃報を告げるワタミの宅食 
  26. 読書してひとりで過ごす喫茶店氷が溶けて水の量(かさ)増す
  27. 「ネパールの平均月収十二万」「変わらんじゃんね」「いや、年収だ」

3月

  1. 君からのメールが途絶え家行けばポールスミスを鬼に裂かるる
  2. 大好きな人と人とが出逢うとき世界の真ん中いるのは私 23.03.24_南_永
  3. 目の見えぬ君に言われし「良い声ね」ボクが悪人だとは知らずに 23.10.16_南_永
  4. 「この車朝からちょっと臭いよね」オナラした?否、朝はしてない
  5. 左手と君の右手が触れたまま一人になりて42.195km(しにいくこ)征く 23.08.10_南_高
  6. 客室の窓から見える白波の看板の光「眠らせてくれ」 23.08.10_南_高
  7. 「あ、てっきり花粉症かと思ったよ」「俺どんなシーンでも泣けるよ」
  8. 駆けつけて視線の合わぬ父を見て暗い廊下に響く静寂 23.07.28_南_永
    (2023年8月24日南日歌壇 選者:永田和宏先生)
  9. ねぇ何で僕にも味噌汁かかってる卒業したら県外に出る
  10. 爪のない人差し指よ左足「赤いペディキュア塗ったみたいね」 23.10.16_南_小
  11. 震災の年に生まれし我か息子 暗い、寒いを羊水の中
  12. 去年までゴーヤにエンドウなりし庭 主(あるじ)はいづこ桜だけ咲く 23.03.24_南_永
  13. 見えていた頃に見ていた桜島 瞼に浮かべただひた走る
  14. 咳止める為に舐めてるのど飴を舐めすぎて飴舐めると咳出る
  15. 毎朝の車通勤季節(とき)の風刹那に流る車窓の端に   ※Instagramストーリーでの返歌
  16. 髪型が変わっただけで「大学生?」聞かれる僕はベンジャミンバトン?
  17. センバツの春やペナント秋冬は駅伝染まる 我が家のあはれ
  18. あなたには幸せになってほしいなんて嘘 勝手に他所(よそ)でくたばっててよ 23.04.15_南_永
  19. 初心者の良いと悪いの詰め合わせ ヒットの後の即牽制死
  20. 画面越しギュッと瞬きする癖があの子に似てて愛おしくなる
  21. 住む世界違うあなたがモニタから僕に返事をする世界線 23.09.28_南_小
  22. 後輩の「勝ちましたね」に「そうなの?」と素知らぬ顔でキーボード打つ
  23. テレビから聞こゆスタンドラッパの音「あぁ日常が戻ってきたな」
  24. 一球で運命決まるこの姿WACKに重ね握る拳を
  25. 難しい走塁決めた君は言う「いつもパワプロでやってるから」
  26. 体験で作った湯呑み小さくて「エスプレッソ専用カップね」
  27. 我を呼ぶ二人称がanhからchúへと変わり老い噛み締める
  28. シナプスと打ったつもりが品薄になって広がり持たなくなって
    (2023年11月9日南日歌壇 選者:永田和宏先生)
  29. ナビが言う「道に迷うと燃料を無駄に消費します」知ってる 23.04.15_南_永
  30. 桜咲く頃になりしも繰り返しテレビに映る箱根駅伝

4月

  1. 桜咲く仕事ゆく道ふと見れば並木の先に桜色カー
  2. エイプリルフールの嘘と知りながら楽しめるよな大人(ひと)になりたい
  3. 三塁打うったことよりフォアボール選んだことを喜ぶ色気
  4. 新しき仕事始めた君のいう「死ぬかと思った」会うまで死ぬな
  5. お裾分け嬉しいけれど面倒なナンバーワンは皮付き筍
  6. 葉桜を照らす街灯照らさるる黄緑の葉と桃色の花 23.05.02_南_永
  7. たけのこを貰ったときだけ食卓に姿現すやさいピーマン 23.05.02_南_永
  8. 大好きな君の息子の誕生日教えてくれるWEBカレンダー
  9. 恐るべし 泥酔しても帰り着く我ら備えし帰巣本能
  10. 短歌読み手話始めようとする私 はたから見ればまるでミーハー
  11. 連日の君とのLINE不安なる君は連絡嫌いなはずじゃ
  12. いつだって新しきこと出会うとき胸に聞かるる やるかやらぬか
  13. 「ねぇ君もどうせいつかは死ぬんだよ なのにどうして」「だからこそだよ」 23.05.19_南_永
  14. 締切のキワのキワまで粘る君イチゴ最後に食うタイプでしょ
  15. さよならを言える別れの多さより言えぬ別れのなんと多さよ 
    (2023年6月22日南日歌壇 選者:永田和宏先生 評あり)
  16. 三十年前も昔に追い越した祖母の背丈を息子が超えし
  17. 「大丈夫」の予測変換「大好き」とiPhone(お前)は何を予測してるの? 23.09.22_南_小
  18. 三年の流行りは過ぎて新しき顔のあなたに人見知りをす 23.09.22_南_永
  19. いつだかのメモに「ワカメが増える夢」回想できぬ深層心理
  20. どうせすぐ君を忘れてしまうんだ だけどおそらくその方がいい 
    (2023年7月13日南日歌壇 選者:永田和宏先生 評あり)
  21. 「ねぇあなた四十歳には見えないよ。K-POPアイドルには見えないけど」
  22. はじまってしまえばいつか終わることしりつはじめるほかなきぼくら 23.09.22_南_永
  23. 二週間前まで一度も勝ってない なのに突然優勝WHY?
  24. キャプテンのバットが静かな間だけ四番に座る背番号12(すぴぃどすたぁ)
  25. 「端末の名前教えてもらえます?「(パソコンの名前?)付けてないです」
  26. 毎年のバリウム検査で思い出す 白い血垂らし出てくる狸
  27. 毎年の検診我を悩ますは「二十三歳痔疾患放置」
  28. 「ねぇ鳩に餌やったらダメだよ」「ソダッタハトヲヤマニハナッタ」 23.10.16_南_高
  29. (知覧のそば茶屋にて)かの国の隣の席に通されて大根そばを啜らずに食ふ 23.09.22_南_高
  30. 週末に野球の応援行きすぎて移動するとき小走りになる
  31. 整った顔の君みてふと気づく「そんなに太く濃い眉してた?」

5月

  1. (2009年博多にて)「さざんぴあ」プロレス目指し1時間歩いた先は老人ホーム
  2. 一郎のインスタライブ眩しくて鼻毛を抜いてバランスを取る
  3. いつだってクールな君を野球だけ誰より負けず嫌いにさせる
  4. パワプロで大声出して激怒する(おこる)君 自分は甘やかされてるくせに
  5. 夢の中溺死する僕見つめてた死んでく僕を僕が見つめる
  6. さようならこれで最後と繰り返す瞳(め)から零るる涙はどうして 23.09.22_南_小
  7. 「興奮で眠れないかも」そんな夜 普通に寝れた零時に寝れた
  8. あらこんなところできみにあえるとはしらぬいちめんしっていってん
  9. あと一度だけしか会えぬ現実を見ぬまま五十四日が過ぎゆ
  10. (手話奉仕員養成講座にて)
    教卓を見つめる六十個の瞳 換気扇だけ声を発する 23.11.09_南_高
  11. あいびきに隣で踊る僕を見て君はいったい何を思うか
  12. この命夢だとしても覚めるまで生きて夢なら覚めないでくれ 23.09.28_南_永
  13. 「それぞれができることから少しずつ」夜の洗濯我の日課に
  14. 二十五歳(にじゅうご)に貰いし君の苦しみが手帳の背から返さへといふ 23.09.28_南_永
  15. 「ひとりでは走りに行く気が起きないんだ」言い訳にしちゃあからさまかな
  16. 無駄なもの一切置かぬ我が家ではいつか私も断捨離さるか 23.10.16_南_高
  17. 午前九時国際線のゲート前 最敬礼で言ふありがとう 23.09.22_南_高
  18. 最寄り駅まで娘を送るテンションで車で向かう福岡空港
  19. そっけない別れの方がきっといい僕らはきっとまた会えるから
    (2023年10月26日南日歌壇 選者:小島ゆかり先生 評あり)
  20. 子どもらと白い球追ふ丸二日 八月色に焦げる我か肌
  21. 「今の僕じゃなくなるのが怖いんだ」「だからね、人は忘れるんだよ」
  22. 「じゃあ何のためにあの人いるんですか?」そういうあなたは何がために
  23. たぶん僕なんていなくたっていいずっと知ってたそんな気してた
  24. 夢占い大量の蚊はストレスで ほんとに出る蚊はもっとストレス
  25. 半年で齢四十になりにけり残すところは下り坂のみ
  26. 夏至前に川沿い歩く夕刻に残り何分君の顔見ゆ
  27. 子どもらにお兄ちゃん先生呼ばる日々我四十なりもはやおじさん
  28. キサラから武道館経てドーム立つ名前に負けぬ華やかさ持て
  29. 僕を見て「眼力がある」君がいう 君を見るときだけじゃないかな 23.10.16_南_小
  30. 大変な仕事させらることよりも役割なきこそ辛きこと知れ
  31. 誰かをか悲しませてはいけぬかを忘れたふりす初夏の満月
  32. 推しが吾に返信くれる世界線リプ要らぬから健やかであれ
  33. 週末が来るたび焦げる我が肌よ 闇夜で会えば透明人間
  34. 毎週の君との時間楽しくて でも待ち侘びてはいけぬとも知る
  35. 夢にまで推しが出てきてしまうほど僕はオタクになっちまったよ
  36. 冷静な君が試合の時見せる負けず嫌いと熱い姿よ
  37. 近頃はその日その日が忙しくてバイトまみれのあの頃おぼゆ
  38. 大海に出てこそ分かる井の中にいた方が実は幸せなのでは 23.09.28_南_高
  39. 何故にこの歳になってまで試さるる場に飛び込むの 死ぬだけなのに
  40. メルカリで買った小説から香る匂いはなぜか実家と同じ
  41. 子とふたり球追ふ思川公園 あの日の友と自分が笑ふ
  42. 空白の三年だとか云ふけれど ただ確実に死に近づいた  23.11.09_南_永
  43. にわか雨 週に一度の楽しみを何故にお前は流してしまう
  44. 思春期が母から離れて寝るといい真ん中長い我が家の川の字   23.11.28_南_小
  45. 翌日にサイゼの約束した後にジョリパで何を頼むか迷う
  46. 道の端話す女性の声聞こゆ「それがみんなの幸せやんか」  23.11.28_南_永
  47. 一年に一度だけでも会えるなら落ち続けるのも悪くないかな
  48. 画面から飛び出した君大きくて緊張ゆえに方言になる
  49. 許せない「愛がなんだ」のテルちゃんを料理で指切る君思い出す
  50. 待ち時間君の勧めし喫茶店(カフェ)へゆく我が衣手は煙草の匂ひ
  51. 田舎道ハザード灯す暗闇で誤解すホタル未来予想図(Ⅱ)
  52. 一でいい旅行カバンの本の数行きは読むけど帰りは寝てる
  53. 体調が優れぬ日には受付の君が必ず「気圧が低い」
  54. ヤジ飛ばす声にあの日の父宿る(父は生きてる応援に来てる)  23.11.28_南_高
  55. いつだってその大切さ気づくのはあなたのことを失ってから
  56. 何をする気にもなれないそんな夜 あと二日後には解散してる
  57. 今はまだ会えなくなると思えずに君の姿を泣けずに見てた  23.11.28_南_小
  58. 一度きりあなたが見せた泣き顔を忘れぬように僕は生きよう
  59. もう二度と会うことのない道産子の君が振り向き「楽しいですね」

7月

  1. 三田線の中で見上げた路線図の本蓮沼が心を乱す
  2. 行かなくちゃ君が前見ているならば止まってる暇どこにあろうか
  3. いつだって全身全霊届けてたあなたはいないでも進まなきゃ
  4. パラサイト君に依存すこの僕を殴っておくれ狂ったように
  5. そのままでいいよと君は言ふけれど少しの間青さ隠して
  6. 届かないふたりの間存在す言葉ひとつの数ミリのずれ
  7. 一番は君にあげよう僕はただ君に寄り添い生きていければ
  8. 変えちまえたかが運命なんてもの君の力で思うがままに
  9. 勝負服身につけるのは朝食の後にしようねジャムつけるでしょ
  10. 戦場の降水帯をかき分けてあなたに会いに負けてたまるか
  11. たぶん僕なんていなくたっていい 悟ってからがほんとの人生
  12. エゴでない愛がこの世にあるのなら教えてほしい「それ愛ですか?」
  13. 見たくなきものを見ぬため目を瞑る倅に胸を撫で下ろしけり  23.11.28_南_高
  14. もうこれでバイバイしよう言ふあなた朝目覚めたら忘れてますよに
  15. 「父ちゃんの声デカすぎてまるでカバのあくびたったよ」お前カバの子
  16. 降りるときお釣りいいです言うことが粋だと思う吾(あ)昭和の残党
  17. エアコンは我が部屋にのみ無きにけり隣の居間の冷気を貰ふ
  18. 我か人生小説よりも奇なれどまさかすべてが夢じゃないよね
  19. じゃあねまた くらいでいいよ僕らには積み重ねてきた時間があるから
  20. 夢の中蒲生(かもう)の町に駅ありて遅刻した僕タクシー乗ってた
  21. 「夏休み家でゆっくり休んどく」言った端から遊びに行った
  22. 陰のない校庭並ぶテント群 キャンプしないでかけっこ見なよ
  23. ワイパーに黄色い銀杏 梅雨明けたばかりで秋にタイムスリップ
  24. 「にわにはにわにわとりがいる。いや、いた」昨夜祝いの席に並んだ
  25. 「稲庭と稲庭風のうどんとは何が違うの」胃に入りゃ同じ
  26. いつのまに妬かなくなって実感すときの流れと君へのおもい
  27. しんしんと流れを止めて貴船川あなたがここにいてくれるよに
  28. 暑すぎてなあにもする気がおきぬ秋になるまで冬眠したい
  29. 「日中は外出を避け過ごしましょう」鳴り響くなか球を追う子ら
  30. おぼろげな君の笑顔を浮かぶれど雲に隠れて見えざりにけり
  31. (栗野にて)軒先でお茶とお菓子と沢庵を出され忘れていたもの懐(おも)う 23.10.26_南_高

8月

  1. 本当のあなたがどうであったとて我が目に映るあなたがすべて
    (2024年2月8日南日歌壇 選者:小島ゆかり先生 評あり)
  2. 食べ切れぬほど大盛りのそうめんが大熊町の幼き思い出 23.10.26_南_高
  3. 年に一度集まり交わす思い出と黙って遊ぶ思春期の子ら 23.12.29_南_小
  4. 僕たちが未来へ向かうそのために走ろう何も変わらなくとも
  5. 大学の皆の思い出我おらず グループLINEに思い知らさる
  6. あの頃はまさか自分が本物のオタクになるとは思わなんだよ
  7. 頑張れぬ我が何よりすべきこと 早く布団に入り眠らん
  8. 「あのね今日、こんなことがね、たったんだ」言える相手に言える幸せ
  9. 台風の最中飼い犬散歩する母子横目に車走らす
  10. ひとごころ詠み手振る舞うべきといふ読んだこころはたれのこころぞ
  11. 2三振セカンドゴロを挟んでの2三振です 寝て忘れよう
  12. ミント入り君のレシピの春巻きが僕の口内連れてくる夏
  13. 推し(きみ)を見る機会が増えれば増えるほど嬉しくもあり淋しくもあり
  14. ウィンカー出さぬ原付大惨事サンドウィッチにして食べようか
  15. 若者とおじさん間を伝書鳩するだけわれ中間管理職
  16. モブキャラの僕に唯一できるのは地味にレベルを上げることだけ
  17. 飲み会の裏のひとりで勉強す相応しいのは何れか知らん
  18. 指文字のチュロスをちくわと読み違え 夢の国(そこ)で竹輪は咥えないでしょ
  19. あの頃は僕がご馳走してたのにいつもまにやら奢られる側
  20. 急に来る台風(あらし)のごとき怒りには息を潜めて過ぎ去るを待つ
  21. 朝五時に家を出るため寝ぼけてて髭剃り忘る君に会うのに
  22. 人生に飽きてる場合ではないの行きたい道は自分で作れ
  23. たとえもう皆にいらぬと言われても毎日笑って過ごせればよい 23.12.29_南_永
  24. 「それこそ」が口癖のひと多すぎて それこそ話に集中できぬ
  25. 起き掛けの微睡みのなか詠みし歌 二度寝の夢に置き忘れくる
  26. 二度寝の夢 仕事ばかりで休まらぬ寝るときくらい忘れさせてよ
  27. おやすみを言わずにLINE終わるのが明日も話したくなるコツ
  28. 好物の豚カツあまり喜べぬ理由は昼にたらふく食べた
  29. アドレナリン(期待ホルモン)出すために今日も自分を買い被りたい
  30. 僕もあのイケおじみたいになれるかな 無理だよ先立つものがないんじゃ
  31. 五の手話を五十と間違え半世紀前から昼食プロテインです

9月

  1. プレートを外して投げたらテイクツー外さなかったらテイクワン
  2. せいちょうと打てば声調表示するiPhone(おぬし)語学を学んでいるな
  3. 推しと僕住んでる世界皆と別? 僕のモモコを誰も知らない
  4. 増えていくノートに振りし番号と減りゆくばかりの我が記憶力
  5. よその子の育ちは早いと言うけれど偶に会う親老いの早さよ
    (2024年1月25日南日歌壇 選者:永田和宏先生 評なし)
  6. 本当の気持ちは大事ではなくて口から出てくる言葉がすべて
  7. 僕はただあったかいのが食べたくて シシャモの子らが弾け飛び出す
  8. 秋空に連なり流る星あまた UFO?いいえ、マスクの仕業
  9. 歯が立たぬ相手のエース(しずうち)に耳もがれても立ち向かいゆく息子(えんおう)が見たい
  10. 暦の上 木曜五つある月は君に会えずに無心で過ごす
  11. うそつきな君は誰より誠実で正直な僕はダメ人間で
  12. あの頃に漫画(シュート)で見てた夢のよな欧州組がゴールを揺らす
  13. そんな子に育てた記憶はついぞ無いリレー選手に選ばれるなぞ
  14. 練習(やきゅう)より宿題優先するなんて見せてください親の顔をば
  15. ご新規をにわかとばさり一太刀に文化終わらず古参の人たち
  16. 「二ホーマー打った褒美のご馳走はなんですか」「いや残りもの」
  17. 「打数処理直後の内野手のプレイ」の中にライナー含まれますか
  18. 「自分の子応援する声抑えたら?「無理よ一番のフアンだもの」
  19. かけっこもリレーも最後に出てくるのいいが心臓ひとつじゃ足りぬ
  20. 二十五年前の声背にハンドルを握りひととき帰るあの頃
  21. 君がまだ僕の隣にいたならばきっといまでも苦しいままで
  22. 投票の後は外食、運動会の後は寿司屋と誰が決めたの
  23. 新しき手帳が届き書き込むは君との予定明日も生きよう
  24. 成功のイメージ脳理に焼き付けるホームラン、一位の動画ばかり見る君
  25. もしけふも君が出てきてくれるなら早く寝るのも悪くないかな 
    (2023年11月23日南日歌壇 選者:小島ゆかり先生)
  26. あなたには選ばれないと知りつつも連絡を待つけふも明日も 
  27. 人助けすることでしか満たされぬ我は空虚でさみしき男 23.12.29_南_高
  28. 目があふと幸せホルモン出るといふ「いま目があった(妄想だけど)」 23.10.26_南_小

10月

  1. なぜに君だけは味方と思ってるずーっとひとりぼっちだっただろうに
  2. いつの間に浦島太郎になったのか職場で皆の話分からず
  3. 気に石投げられし夢 フロイトよ深層心理を教えておくれ
  4. 常勝の監督 子らに繰り返す言葉は己に言い聞かすため
  5. 寝る前に君が私を想ってるそれだけでいいこのままでいい
  6. 「できるだけ遠くにボール飛ばしてこい」直後足もと転がるボール
  7. 週一度画面越し会う外つ国の君の「おやすみなさい」にたじろぐ 23.12.22_南_高
  8. 推し活に客観性は不要にてなりふり構わずただ金遣へ
  9. 連休に布団に聞こゆ雨の音 目が覚めるまでけふは眠らん
  10. 自分では未だ若いと思えども白髪の数が物語る歳
  11. 何もない日でも無理やり絞り出すそれが日課といふものなれば
  12. いくらでも愚痴っていいよ君のためならば井戸にもなってあげるさ
  13. また明日も会えると思っていればこそ呑気に笑い別る愚かさ
  14. 「更に更に一歩前進」試験前 奮い立たすは便器の標語 23.10.26_南_永
  15. 鏡見るたびに増えゆく白髪見て介護保険料払う覚悟す
  16. 人生がくだりはじめているのにさ 肌手入れして何になるのか
  17. インスタにあなたがあげし金木犀 我も探しに町へ繰り出す
  18. あちらから私は見えていないのかそもそも存在すらしないのか
  19. 何歳になっても他人(ひと)がうらやましい ずっとうらやましいままで死ぬ
  20. 車は軽スーツは吊るし腕ガーミン安物だらけの我は安物
  21. 監督とコーチの南蛮弁当をなんとか僕が食べれませんか
  22. 飛べずともただの豚でもかまわない ただ穏やかに暮らしていたい 23.10.26_南_永
  23. 僕だけが知ってる君の顔浮かべ 優越感と布団に入る
  24. ただの豚に甘んじたその瞬間その瞬間に僕でなくなる
  25. フォアグラになった肝臓 隠し持つ僕もいつかはフランス料理に
  26. 君だけはわかってくれると思ってた思いたかっただけかもしれない
  27. 穴空いているからこその風通し 君の言葉が埋めゆく隙間 23.12.22_南_高
  28. 良いこともよくないこともあるけれど 生きるお互い様の心で
  29. もう君と並んで歩くことはない だから揃いのベストを買った

11月

  1. 出会う前のあなたの記憶買えたなら不安も少しは消えるかしらね 23.11.09_南_小
  2. 口閉じる「安眠テープ」安眠になるのは家族 我は苦しき 23.12.22_南_永
  3. 「てそがり」を方言だとは知らぬ君いまや都会の言葉に染まる 23.11.09_南_高
  4. 「死にたい」と「死にたくない」の子の君は悩むことなく生きてくれたら 23.11.09_南_永
  5. (PUYUY「おんたろうズ」を観て)
    おんたろう ほんとの声をきいてくれ何がほんとか分からないけど
  6. (PUYUY「おんたろうズ」を観て)
    僕が君のおんたろうになるからさ何でも言って ―え、僕じゃダメ?
  7. 六年後の君ゐぬ我が家の寂しさを映すひと夜の修学旅行 23.11.09_南_小
  8. カタカナで壁に書かれし「ザコ」の文字 七年後見て「うおっ」と思へ
  9. 「本当にでないんですか?自己ベスト」「機嫌が悪くなるけどいいの?」
  10. 君の目にソフトボールが降ってきてそれで僕らの距離縮まった
  11. おとなりのじじいに届く宅食の配達員ももちじじいだし  23.11.28_南_永
  12. あの日から透明人間になった僕のせいとは言え耐えがたい
  13. 重ねるはゼン高ナインの前向きさ さぁ息子(おまえ)らが見返す番だ
  14. きみの声凛としたその笑顔にも脳揺さぶられ高まる鼓動
  15. いますぐにチャリンコ漕いでごめんだけきみに伝えに女々しいかしら
  16. 僕にその資格がないの分かってる だけど妬くのさ今日も明日も
  17. 最悪なセリフを吐くの堪えてる「なんで怒ってるんだと思う?」
  18. ただの偶然なんだけど君も手話勉強してただなんて幸せ
  19. あぁ今日も白髪を20本抜きました きっと3年後には禿げてる
  20. 高熱の試合で監督飲ます玉その正体知る30年後
  21. 噤むまで きっと誰かに伝えても正しくないと笑わるのなら 23.12.22_南_永
  22. 嫌われる理由を作ることだけが傷つかぬためにできることなの 23.12.22_南_小
  23. 分からぬと皆が離れていこうともただひとり君いてくれるなら 24.03.24_南_小 
  24. 「世の中に無駄なものなど何もない」歯医者の後のスターバックス
  25. 「君のことちゃんと好き」とか言うけれど私結構根に持つからね
  26. 「きのこ頭気持ち悪い」って言うけれど俺の母親きのこだからね
  27. 思いがけず13年ぶりの再会に君の呼び名を思い出せずに 23.12.22_南_小
  28. 自分が好きな姿しか認めない それは愛ではなくてエゴだよ
  29. 旅立ちを前に調子が悪すぎる気のせいであれ気のせいであれ
  30. 窓際をなぜ選んだか景色より大切なこと厠いくこと

12月

  1. 張り切りて越南語にて頼みしが水(ヌォック)と言えどオレンジ渡さる
  2. 異国でもべ寝相は同じ布団から枕はみ出る息子のように 23.12.29_南_高
  3. ベトナムにゃ冬にも蚊がいる果物の果汁を吸って冬を越してる 24.01.19_南_高
  4. 寝れぬのにニワトリ鳴き出すテッペンに家畜にまでも国民性が
  5. 思い通りにいかないことが多すぎて普通が普通でないことを知る
  6. 持久走前にインフルうつされるも言い訳もせぬ君前を向き
  7. 人のせいばかりしているこの俺の息子は言い訳ひとつもせずに 24.03.24_南_小 
  8. 温かき己の布団で寝らること何より幸せといふことを知る
  9. 八日間我のいぬ間に小六の息子がひとりで寝るようになり 24.01.19_南_高
  10. こんなにも容易に捨ててしまえるの あなたにとってそれだけのこと
  11. 一度たりとも「日本人?」と聞かれぬ 我はいつから韓流スターに
  12. この日まで父母のいのりにくるまれて出てきた君よただ健やかに 24.01.19_南_小
  13. たとえば君僕がこのまま帰らねど素知らぬ顔で明日を迎えよ 24.03.24_南_永 
  14. 37.2度(ナナドニブ)は熱出たうちに入らない さういう僕は昭和人間?
  15. 家中で隔離生活隔離さるのはひとりだけ元気な私 24.02.13_南_永
  16. 引退の最後の試合インフルで出られぬ君は何を思ふか
  17. あの店の君の記憶は四音で僕は五音Marmolejo(マルモレホ)なり
  18. 満足のいかぬ髪でも似合ってる君がいうなら悪くないかな
  19. Bereal(このアプリ)君しか友達いないから君への近況報告アプリね
  20. 君と同じニアウリの香を嗅ぎながら寝る ニアウリはフトモモ科らしい 24.02.13_南_高
  21. 出発日腋に挟んだ体温計音鳴らずしてそっとOFFする
  22. 「僕はもう食べられないよ」「そう言わず試しに飲んで」襲うSầu riêng(ドリアン)
  23. 誰でもが世界に届けられる時代 無名の歌手訪ね香港から
  24. 日本ではカット千円だけなのに なんでハノイで四倍するの
  25. 三塁打打っても大人気なくはない 僕は経験者ではないから
  26. さりげなく「惚れなおした」と言ってみる 君の反応見ないふりして 24.01.19_南_小
  27. 誰も皆一度はう◯こ漏らしたらいいと思うよ優しくなれる
  28. 「人間は忘れる為に呆けるのよ」さういふ君もいつかはきっと 24.01.19_南_永 
  29. 自分より遥か先ゆく友に会い嬉しく思い我もと思い 24.02.13_南_高
  30. 正月がやってきたらば走ります正月までは寝て過ごします
  31. 「あと五球!ミスしたらまたゼロからね」父(われ)にノックす息子(鬼コーチ)かな

2024年

1月

  1. 脚効かぬばあさん先か手が震う親父が先か憂う元日
  2. ねぇ電話かけて来ないで今あなた彼女と旅行しているんでしょ
  3. 正月の年日度の集まりに思春期の子ら顔出さずして
  4. 「寝る前にちゃんと切ってね」最近は子に叱られることの方が増え 24.02.13_南_永 
  5. おあいこね彼女がヤキモチ妬いたなら 私に勝機はないのだけれど 24.02.13_南_永 
  6. 「ありがとう。少し元気になりました」いえ、こちらこそ。君のおかげで 24.02.26_南_小 
  7. 「ひとりっ子の方が気楽でいいもん」嘘か真か父母は救われ 24.02.13_南_永 
  8. 君もララランドのCD持ってたの 君がミア僕がセブってことでいい?
  9. チェックシャツ初めて着たのにかわいいのに 誰も見てない興味なんてない
  10. 君のいぬ世界は酸素が薄いから僕はあちらの星へ移ろう 24.02.26_南_小 
  11. アトミックテレサがテレサの大きいのってこと誰も知らないのなぜ
  12. あきらめる準備はとうにできているあきらめる日まで僕は生きるよ 24.03.24_南_永 
  13. 「若者は肯定感が高いから」そういう我が一番高い
  14. 「地球(このほし)が終わる前の日何食べる?」「ダイエット中だからやめとく」 24.01.19_南_永 
  15. 偶に見た働く君はかわいくて さてはこれまで猫かぶってたな
  16. 誰よりも自分の価値を知っている君が輝くひとりの舞台
  17. ターミナル2には551ないけどさ 蓬莱買っても君は気づかぬ
  18. 今日はもう走りたくない我が為に天から恵み降れっ降れっ降れー
  19. こうやって消えていくのね習慣は敵はただひとり怠惰な自分
  20. 人生で何より大事は体力よ仕事も遊びもすべては体力
  21. たとえ君がそれに失敗したとして死ぬわけじゃない でも辛いよね 24.02.13_南_小 
  22. 君と僕の運命の日が同じとは僕はダメでもせめて君だけ
  23. 陰と陽 陰と日向の君と僕が一緒にいれば平穏無事で 24.02.13_南_小 
  24. え?君の彼 四十歳の日本人?俺もワンチャンありよりのあり?
  25. うまくいく日ばかりじゃない分かってる 分かってるけどうまくいけよな
  26. 名前さえ書けば受かると言われながら受からざらむは名前書かぬか
  27. 子どもたちはすべて知ってる分かってるおとなの事情に巻き込むでない
  28. バラバラに寝るのは構わないけれど俺の部屋だけ汚れちゃないか
  29. 「いや私、ほんとに保育士(せんせい)なんですよ」「ほんとに保育士(せんせい)みたいですね」
  30. 負けを知れ そしてそこから這い上がれ 卑屈になるな前だけを見ろ
  31. 君の声聞くと眠たくなるのはさ 退屈じゃなく安らぐがゆえ

2月

  1. フローラとビアンカどちらか片方を選べる立場にいると思うな
  2. 週末にあなたが笑ってくれるから日々の怒りも夜に溶けてく
  3. 早々と君が巣立つてゆく日々を憂ひし父(われ)のさみしさかへせ
  4. 寝る前に本読む習慣ある君を浮かべ本読む布団の中で
  5. 明けましてめでたいなんてことはない 今年も辛い日々は明けまい
  6. 画面越し見慣れた君のすっぴんも Youtubeではばっちりメイク
  7. この僕が必要とされないわけは 誰も必要としていないから
  8. 「本当にお前が決めたことならば・・・」言えるのが親 言えぬのも親
  9. あるときは先生になりあるときは生徒になるの お互い様ね
  10. 寒ささへなければ君と永遠にここで話していられるのにね
  11. その昔別れ話に米国の君と四時間三万円也
  12. チョコ待って玄関に立つ女子たちに盛り上がる父母 息子は不在
  13. この時代離れてたって簡単に顔見て話せる「別れたくない」
  14. もし僕のことを忘れてしまっても君が元気で生きてればいい
  15. 「私には皮が固くて剥けないの」手から一日薫る甘夏
  16. 必要な嘘があることもうすでに知ってる君は人生何度目
  17. なぜ僕にやる気がないと決めつける?君に見えない色のやる気が
  18. 君からのチョコ待ってたらCALDIのインスタント麺くれたけど義理?
  19. きみとゆく夜の散歩道 幻の寿司屋に灯る 灯りがけふは
  20. その本が手元にあるうちは僕ときみとは繋がっている
  21. けふの日がデートであろうとなかろうとあなたのそばにいられるのなら
  22. 誕生日「欲しいものある?」聞かないで 何でもいいのあなたからなら
  23. そりゃ会いに行きますよきみに会えるなら200kmでも車飛ばして
  24. 画面(モニタ)越し幾度も顔を見た君と交わす本当(ほんと)の「はじめまして」を
  25. もし君が楽しみにしているならば それよりもっと僕は楽しみ
  26. 感情を面に出さぬ その君が「行きたい」と言ったそれこそすべて
  27. どこまでも分かり合えない人はいる 分かり合えない事実は分かる
  28. 来週になれば君とのデート でも何故にゆっくり進む時間よ

3月

  1. 「真夜中のサービスエリア楽しいよ」君とハイウェイ走る君へと
  2. 唐突に「愛がなんだ」のテルちゃんで指切り泣く君思い出し鬱
  3. 誕生日誰より早く祝うためうつらうつらで零時を待つの
  4. 君が何しやうが僕に何か言ふ権利はないと知りつつも言ふ
  5. あぁ君はこんなことすら知らぬほど僕から離れて行ってしまった
  6. 僕はもうここではいらぬやうだから死んだふりして生きていくから
  7. 僕だってもう一度だけ輝ける日は来るのかな 来ないとしても
  8. 「子どもだけでも産んでおいたら良かったかな」僕は君さえいれば十分
  9. 深刻な顔であなたが話すから繋ぐ左手あったかくてい
  10. 本人の意思を尊重することで冷たく思わることがジレンマ
  11. 明らかに過去とは違う我が体 これからいかに付き合っていかん
  12. 僕に会うそのためだけに鹿児島に 品川駅から新幹線で
  13. 話してもわからぬ奴はきつといる 背を向け逃げよ一目散に
  14. 「もう出ない」頭の中を絞り出す伊東家の裏ワザ誰か知らぬか
  15. 僕だけが楽しみなのは悔しいから一秒でも笑わせたいな
  16. もし君がお粧しをして来たならば少しは期待してもいいかな
  17. 「楽しい」と口にしないで顔見ればあなたの気持ちくらい分かるよ
  18. 張り切ってデート前日散髪へ君の隣に相応しいやうに
  19. 君の方から連絡が来ることはない だけども今日もずっと待ってる
  20. どこへ行く何を見るかは重要じゃないの あなたが隣にいれば
  21. 普段から化粧しないのにあからさまかなと右だけピアスを付けた
  22. 一線を越えずにただの仲良しでいた方がきっと幸せかもね
  23. 最近の私は君に貸すために本を読んでる気がしています
  24. あの夜に手を繋いできたそのことを君は覚えてないというのに
  25. 手が触れただけで「濃厚」いふならば 君に感染(うつ)っているはずなのに
  26. ないでしょうあなたがうつした可能性 指一本触れやしないくせに
  27. 皆の衆こんな時間に我か歌にいいねしないで寝るがよろしい
  28. 君と見た夜の桜は二分咲きで 君への気持ちはほぼ満開で
  29. 空想(フィクション)を言い訳にして詠む日々よ 何が事実か分からなくなり
  30. 君からのLINEはどうせ来ないから 忘れたフリして教科書開く
  31. 満開の桜並木を走りつつ君と見た二分の桜をおぼゆ

4月

  1. 替玉をする息子(きみ)の横 父(ぼく)はもう腹いっぱいになってしまった
  2. 私たち側(はた)からみればカップルで だけどあなたは「ただの仲良し」
  3. また君のあんな笑顔が見れるなら僕は何ヶ月だろうと待つよ
  4. 十五年ぶりに姿が見えた気がして何回も行ったり来たり
  5. 春風が散らす満開広がるは桃色の海悪くないかな
  6. いつのまに僕とあなたは終わったの いや始まつてもいなかつたのか
  7. 君の着る服が大きくなりすぎて僕のと見分けつかなくなって
  8. あっという間に中学ということは気づいたときにはもう君はいぬ
  9. 「どうだった?今日は学校」吾子の言ふ「楽しかったよ」何よりうれし
  10. 朝早く起きるためには早く寝る そんなことすらできぬ僕らは
  11. 今ここで死んでも誰も気づかない それはやだから早く帰ろう
  12. 「仕事よりプライベートが大事です」うるせえまずは黙って働け
  13. 最近はもう誰からも連絡もないしひとりでさっさと寝よう
  14. 綻んだあなたの顔を浮かべつつ悩む時間が何よりたのし
  15. 楽しみにしてたのはただ僕だけで君にとってはただの予定で
  16. あなたいぬ今おもしろいことあったらば私は誰に話したらいい
  17. 「母ちゃんはなぜ父ちゃんを選んだの?」息子よどうして母だけに聞く
  18. 飽きちゃったわけではないの あなたにはどうせ私は見えてないから
  19. 物言わぬ君の顔色悪い気がして不安だけ積もり積もって
  20. いつの間にヒビが入ってしまったの もう修復もできないほどに
  21. 家の中 静かな戦争お前まで黙る必要ないのだけれど
  22. 喧嘩しても寝て起きたら元通り それが取り柄と思ってたのに
  23. 家族よりも僕のことを知っている君はカルビを焦げるまで焼く
  24. 君はいつも「いつでも電話していいよ」言わないでよ 出やしないのに
  25. 謝るにしても謝る言葉すら今の僕には思いつかない
  26. あきらめることはいつでもできるからしんだふりしていきるのもいい
  27. もし君がずっと黙っている気なら君の気が済むまで付き合うよ
  28. X(エックス)といえば私はTOSHIだからくれないをついくちづさむ
  29. みづからで考え決めろと言われても楽な方しか流れていゆかぬ
  30. あぁいつからあなたが夢に出るようになってしまった 明日もどうか

5月

  1. もう夢に出てこなくてもいいんだよ 直接誘うことにしたから
  2. 君と二度会えぬ悲しさ忘るほど踊り狂ひし福岡の夜
  3. 君の前でおならを我慢する内は二人の距離も遠いままかな
  4. どこへでも一人へ行けるのだけれど君が隣にいた方がよい
  5. 僕は君にだけ優しいわけじゃない けれど君には特別優しい
  6. お昼寝をしてもせずとも夜寝れぬならした方がきつと幸せ
  7. 足るを知るよくの少ない君だから こんな僕でも良かったのかな
  8. いつだって自分が誰より正しいと言わん姿が鏡に見ゆる
  9. ミラー越し手を振る君を見れたならどんな疲れも一瞬で消ゆ
  10. あの頃に選ばなかった人生を生きてたとして 僕でいれたか
  11. 「いつの間に?」思う間もなく知らぬ間に 僕らふたりもきっと終わって
  12. コンロ逝き洗濯機逝きリモコンも 今度は僕の番な気がする
  13. その笑顔作りものでも構わない いま見てるのが私だけなら
  14. 君とただバレーの話がしたくって いまだけ入るU-NEXTに
  15. 前に出て俺が俺じゃないとこが焦れったくありい愛ほしくあり
  16. 上がらない方はバレーか寝違えか それとも不惑肩(しじゅうがた)なのかしら
  17. ハイタッチ君と毎朝するためにネイションズリーグ(試合)の結果チェックする日々
  18. 我が子にも座右の銘があることを教えてくれる卒業文集
  19. もう僕にしたい髪型なんてない だからあなたが好きそうなのに
  20. 寝違えがなかなかどうも治らない なんとこちらが四十肩ですか
  21. 私しか知らないあなた知りたくて だけどそんなのほんとはいなくて
  22. 君が寝る時間は遅くなったけど 僕の帰りはもっと遅くて
  23. だんだんと我の灯りが消えてゆく すべて忘るるためと思えば
  24. 胃カメラのナースが君と同じ名でだから余計にかわいく見えた
  25. アイロンを君が毎日かけるシャツ僕は着るなり袖を捲って
  26. あの頃に友と球追ふ思川公園で子とまた球を追ふ
  27. 化粧したらもっときれいになるはずの君のプレーンなその顔も好き
  28. 「うまいもの嫌いな人と食べる派」と 君が言っても僕は誘うよ
  29. 君が前 踏み怒られしあの簀子(すのこ)今日はあいつが怒られてたよ
  30. あの人を可愛そうだと思ってる僕が一番可哀想だね

6月

  1. 絶対にあなたはずっと幸せでいてくださいね わたし以外と
  2. 玄関の緑の君のサンダルを普通に履けるとは思わずに
  3. 「これからもあなたにずっと幸せでいてほしいから」ふたりの終わりに
  4. 六錠を朝夕二回七日間これでピロリがいなくなるなら
  5. 絶世の美女にたまゆら見惚れてた それが君だと気づきもせずに
  6. 「もしかして私ラインを無視してます?」もしかして俺無視されてます?
  7. 絶対にショートがいいと思ってた 昨日偶然君に会うまで
  8. 本当に僕が怒っていることも君にまったく伝わらなくて

執筆者: 能瀬 博之