短歌

今日の短歌 2023.01.29

青春時代のある時期「いい人」と言われるのがすごく嫌な時期があった。

3枚目なのは自覚しているのでしょうがないのだけれど、まぁモテない。「かっこいい」と言われることはない代わりに「いい人」と言われるもんだから「なんだよいい人って」と卑屈になってくる。

極め付きは高校一年の時の出来事だ。仲の良かった友人が私に好きな子(仮にKさんとする)がいることを知り、電話で告白をするように焚き付けてきた。後から知ったことだが、この友人はKさんはH君のことを好きだと言うことを知っていたらしい。

書きながら思い出してきたのだけれど、あれはまだ一学期か二学期、まだ高校生活始まって間もなかった気もする。そんなタイミングで告白しようとする自分に若干引いている。

さて、友人に背中を押されるがままKさんに電話を掛けた私。土曜の午後だった気がする。1-9の教室からだった。なぜ電話だったのかは思い出せない。電話で呼び出して直接言えば良かったのではないか。

電話に出たKさんに何と言ったかは覚えていないが、どうせ「好きです。付き合ってください」くらいのことであろう。しばらくの沈黙の後にKさんが発した言葉に私は耳を疑った。

「ごめんなさい。でも、能瀬くん、良い人だから…」

百歩譲って「能瀬くん良い人だけど、ごめんなさい」なら理解はできる。しかし、詫びを入れられた後に良い人とフォローをされた挙句に訪れたのは沈黙である。

とんでもなく長い沈黙。おそらく「うん、分かった。ありがとう」とでも言って、さっさと電話を切れば良かったのだろう。だが私は「良い人だから…」の後に続く言葉に救いを求めてしまった。長い長い沈黙は大袈裟ではなく5分以上続いたと思う。馬鹿だ。お互いに。

そうして私は良い人と言われるのが大嫌いになり、大学で良い人でなくなった結果、たくさんのものを失うわけなのだけれど、それはまた別の話。

 

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