先日のこと。短大の介護福祉士養成コースを卒業して、介護福祉士として働く予定の外国人スタッフの在留資格変更許可申請に入管を訪れた。
ちょっとしたトラブルも有り、入管に到着したのは予定していたのより1時間遅い14:30。到着した時点で10人近くが待っており書類を提出した時点で待ち時間が長くなる旨、伝えられていたものの1時間経っても、1時間半経っても呼ばれることはなく、17時半には職場に戻る必要があったため徐々に焦ってきた。
ようやく16:20に呼ばれ「能瀬さんこちら在留資格変更ですかね?」と聞かれるので、「そうです。これに書いてる通り、留学から直接「介護」に変更できないということなんで、一旦特定活動に変更するための申請です」と答えた。
すると更に15分後呼ばれ「能瀬さん、これ書式が違いますね」「えぇぇ...」
ということで、2時間待った挙げ句、この日は申請を受け付けられず(別のスタッフ1名分は無事に受理)、帰ることに。
なぜ「介護」だけが特定活動を挟まなくてはならないのか
そもそも、介護福祉士養成校の卒業生が在留資格「介護」への在留資格変更許可申請をする際に、「特定活動」を挟まなくてはならないのはとても不思議です。在留資格「医療」の場合は、養成校の卒業見込み証明書を提出し在留資格変更許可申請を行なっておき、3月に合格通知が届いた時点でその写しを提出すれば「医療」の許可がおりていた気がします。
出入国管理局のウェブサイトに記載の説明を読んでみます。
令和8年度までに介護福祉士養成施設を卒業する留学生が、社会福祉士及び介護福祉士法の一部を改正する法律(平成19年法律第125号)の附則第6条の3の適用を受けて、介護福祉士の国家試験に合格することなく介護福祉士となる資格を取得するためには、介護福祉士養成施設を卒業した年度の翌年度の4月1日から5年間継続して社会福祉士及び介護福祉士法第2条第2項に規定する介護等の業務に従事する必要があります。
一方、在留資格「介護」への変更許可を受けるためには介護福祉士の登録を受ける必要があるところ、介護福祉士登録証が交付されるのは4月1日以降になる可能性が高く、同日までに「介護」への在留資格の変更が許可されず、上記附則の適用を受けられない留学生が発生することが判明しています。
そのため、卒業した年度の翌年度の4月1日から介護施設等において介護等の業務に従事する場合は、介護福祉士登録証を受領するまでの間、「特定活動」の在留資格により、介護等の業務に従事することを認めることとしました。
引用:介護福祉士養成施設を卒業して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについて | 出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00119.html
太字部分が不思議な点。「介護福祉士登録証が交付されるのは4月1日以降になる可能性が高く」とありますが、これは「医療」の他の職種も同じなのでは?と思ってしまうわけです。
理由のひとつには、そもそも母数が違うということがあるのかもしれません。医師や看護師、その他医療専門職につく外国人の数が、介護福祉士を希望する外国人と比べて少なく、それほど問題にならないのかもしれません。
国家試験に不合格になったら?
そもそも国家試験に不合格になった場合どうなるのでしょう?
医師、看護師、その他医療専門職に関して言えば、不合格になった時点で、在留許可申請が不許可になる(もしくは本人が取り下げる?)だけです。
では、介護福祉士の場合はどうでしょう?もう一度、先程の説明を見てみましょう。
1 措置の内容
令和8年度までに介護福祉士養成施設を卒業する留学生が、社会福祉士及び介護福祉士法の一部を改正する法律(平成19年法律第125号)の附則第6条の3の適用を受けて、介護福祉士の国家試験に合格することなく介護福祉士となる資格を取得するためには、介護福祉士養成施設を卒業した年度の翌年度の4月1日から5年間継続して社会福祉士及び介護福祉士法第2条第2項に規定する介護等の業務に従事する必要があります。
一方、在留資格「介護」への変更許可を受けるためには介護福祉士の登録を受ける必要があるところ、介護福祉士登録証が交付されるのは4月1日以降になる可能性が高く、同日までに「介護」への在留資格の変更が許可されず、上記附則の適用を受けられない留学生が発生することが判明しています。
引用:介護福祉士養成施設を卒業して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについて | 出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00119.html
これだけ読むと、不合格になっても5年継続就労後に介護福祉士資格を取得できることが分かりますが、それまでのことは読み取れません。
詳しく書いてあるところを探してみると
これを読むと以下のことがわかります。
- 平成29年3月31日までは介護福祉士養成施設卒業者は、国家試験を受験せずに介護福祉士になれていた。
- 法改正で平成29年4月1日からは介護福祉士養成施設を卒業しても国家試験の合格が必要になった。
- 暫定措置として平成29年4月1日から令和9年3月31日までの卒業者は、介護福祉士試験に合格しなくても5年間は介護福祉士として登録が可能。
ん??合格しなくても介護福祉士資格を有する者として認められるのであれば、なおさら「特定活動」挟まず「介護」に変更していいのでは?
と思っちゃうのですが、同じページの下部を見ると
昨年4月1日から「准介護福祉士」制度が施行されているとのこと。つまり、この3月に介護福祉士養成校を卒業した者は「介護福祉士」にも「准介護福祉士」にも登録ができてしまうわけです。これは日本人の話であって、外国人が「准介護福祉士」に登録してしまうとどうなるのか。
日本介護福祉士養成施設協会運営のこちらのサイトによると「准介護福祉士に関する在留資格の取扱は決まっていない」とのこと。(そんなことする人はいないと思いますが)介護福祉士養成校を卒業した外国人が、介護福祉士ではなく准介護福祉士として登録を行なってしまうと、在留資格「介護」の許可はおりないということになるんだと思われます。
「准介護福祉士としての登録の可能性があること」「不合格だったとしても、介護福祉士資格の登録を行わないと介護福祉士として認められないこと」「医療の資格は合格通知をもって在留資格変更許可申請の審査が行えるが、介護福祉士試験に不合格となった場合、正式な登録を待たずに審査を行えないこと」から在留資格「介護」だけ「特定活動」を挟む必要があるということが腑に落ちました。
在留資格変更許可申請書の書き方
ちなみに該当の在留資格変更許可申請書はこちらのページに書いてある通り「U」のものになりますが、私は「介護福祉士」「特定活動」というワードから勝手に「N」を使用していました。Uにも複数種類がありますので、間違えないように気をつけましょう。
ちなみにこちらの申請書書き方めちゃくちゃ簡単なのですが、1箇所だけどれを選べばいいか分からない項目が
申請人等作成用の2の17活動内容です。介護福祉士は選択肢に無いですし(あっても選ぶのはおかしいですが)、もちろんEPA介護福祉士でもありません。
入管に問い合わせたところ、⑪のその他を選択し「介護福祉士試験の結果を待つため」と記入してくださいとのことでした。
本日、Uの書式で提出し直し、無事受理されました。
国試受験ルートは元々なかった?
色々調べてたら更に引っかかることが。先ほどまでのパターンは「介護福祉士養成施設を卒業して介護等の業務に従事する留学生」でしたが、出入国管理局のウェブサイトにはもうひとつ「介護福祉士国家試験に合格して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについて」というページが。
ん?何が違うのよ?と読んでみると
介護福祉士国家試験に合格して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについて
介護福祉士養成施設を卒業して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについては,(こちら)に掲載されていますが,令和2年4月1日に在留資格「介護」の上陸基準省令が改正され,介護福祉士の資格を取得したルートに限らず「介護」の在留資格が認められることとなりました。これに伴い,実務経験ルート及び福祉系高校ルートから介護福祉士の資格を取得した留学生についても,介護福祉士国家試験に合格した年度の翌年度の4月1日から介護福祉士登録証が交付されるまでの間,介護施設等で就労することができるよう,下記の通り措置を実施することとしました。
なお,本特例措置に係るお問い合わせは,地方出入国在留管理官署(お問い合わせ先)にお願いします。
引用:介護福祉士国家試験に合格して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについて | 出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00056.html
ということは、令和2年4月1日に省令が改正になるまでは、介護福祉士養成校の卒業生以外(たとえば、技能実習等で3年の実務経験のある者)は在留資格「介護」の要件を満たしていなかったということ?まさにそのようで
在留資格「介護」の対象者は,日本の介護福祉士養成施設(都道府県知事が指定する専門学校等)を卒業し,介護福祉士の資格を取得した方です。
介護福祉士国家試験に合格して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについて | 出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00056.html
とガッツリ書いてます。こちらにも
この様に記載があり、養成施設ルート以外は認められていなかったことが分かります。
EPA介護福祉士候補生の合格後の在留資格は?
さらに引っかかる点が。ん?EPA?EPAルート✕って何?EPA介護福祉士候補生が介護福祉士試験に合格したら在留資格「介護」ではないの?
こちらもちゃんと回答してくれるサイトを見つけました。EPAを管理しているJICWELS(国際厚生事業団)です。
在留資格「介護」については、従来、介護福祉士の資格取得ルートのうち、養成施設ルートしか認められなかったところ、令和2年4月1日の法務省令改正により、実務経験ルートも認められるようになりました。これに伴い、EPAに基づき介護福祉士候補者として来日し、介護福祉士の国家資格を取得した者についても、在留資格「介護」に変更できることになりました。在留資格変更にあたって出入国在留管理官署に提出が必要な書類等の詳細については、こちらをご参照ください。
なお、EPA介護福祉士の在留資格を「特定活動(EPA介護福祉士)」から在留資格「介護」に変更すると、当該介護福祉士はEPA制度の枠外で日本に滞在することとなり、巡回訪問や資格取得者向け研修等、日本政府や当事業団が実施している支援の対象外となります。EPA介護福祉士(特定活動)を継続するメリットは様々です。在留資格の変更を検討される際は、十分にご留意ください。ご参考までに、在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」及び在留資格「介護」のそれぞれの在留資格により日本に滞在した場合の支援内容や制度の比較表を下記に記載いたします。
引用:在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」から 在留資格「介護」への変更について | 公益社団法人 国際厚生事業団 JICWELS
https://jicwels.or.jp/?p=49275
これを読むとこれまではEPA介護福祉士候補生の在留資格は合格前は特定活動(EPA介護福祉士候補生)だったものが「特定活動(EPA介護福祉士)」となっていたことが分かります。それが法改正により、在留資格「介護」の選択肢も選べるようになったとのこと。私はてっきり在留資格「介護」一択だと思いこんでいました。
比較表も下部にあり、
在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」を選択することで、外国人本人が享受できる内容としては
JICWELSによる支援等
- スキルアップ研修やキャリアアップ研修を受講可能(無料)
※過去の開催例:
介護現場で必要な日本語能力の現状把握と向上
メンタルヘルスケア
在留資格や社会保障に関する学習等 - 相談窓口(無料)
専属相談員による受入れ施設と本人双方の相談対応
顧問社会保険労務士による労務相談対応
顧問精神科医によるメンタルヘルス相談対応 - 巡回訪問(無料)
当事業団が就労・生活等に関する相談・助言対応 - EPA介護福祉士の適正な労務・在留管理の支援(無料)
受入れ機関からの定期報告、雇用契約終了報告等、各種報告により当事業団が管理、相談・助言対応 - EPA受入れに係るインドネシア・フィリピン・ベトナム送り出し調整機関との手続き支援
転職時対応
- 当事業団が転職先の就労状況および賃金の同等報酬確認(要件確認*)を実施
*手数料あり(求人者負担): 25,000円又は30,000円/1施設あたり
滞在管理費
- 滞在管理費*を当事業団へ納付
*滞在管理費(受入れ施設負担): 一人当たり年度10,000円 - 費用内容:
入管への所定報告取次、情報の取りまとめと国への報告、在留管理にかかる相談対応、手続き案内、メールマガジン配信、資格取得者研修、データ管理等
と、個人的には「相談」という点以外はあまりメリットを感じません。
まとめ
今回、1つの疑問から色々と調べてみましたが、在留資格ひとつとっても、非常に複雑だということがわかりました。ちゃんと調べて手続きしないと痛い目に合いそうですね~。